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死にゆくあなたに 自分はなんと言えばよかったんだろう。 第3話 「――――?!!!!??!!!!!」 カカシさんの声が遠くに聞こえた。 あぁ、でも多分気のせいだ。 カカシさんは私の事でこんなに必死になったりしない。 でも・・・死に行く私に少しくらい同情してくれたのかもしれないな。 これで少しは恩返しできたかな。 私を生かしてくれたカカシさんに。 ありがとうの言葉だけじゃ、自分すら満足できないから。 任務は順調に遂行していたはずだった。 ―どうやら現れたようだ。 カカシさんの声がインカム越しに聞こえる。 念のため、場所を一度変更していたにも関わらず敵であるテロリスト集団が現れたようだ。 「隊長、どうして場所が漏れたんでしょうか。」 「あぁ、気になるところだな。よし、護りを固めるぞ。」 大名たちには機密保持のため室内への入室は禁止されていたが、状況が状況である。 隊長から緊急事態であることを説明し1人は室内に入り、隊長と私は部屋付近を護っていた。 インカムから入る情報によると、カカシさんたち捕獲組と他の仲間の討伐組に上手く別れられたらしい。 このままうまく運ぶかと思われたが、どうやら捕獲組が苦戦しているという情報がインカム越しに耳に入った。 カカシさん・・・。 その時、大名たちがいる室内が急に騒がしくなった。 「隊長!!!!!」 「どうした!?」 隊長は私にその場にいるよう目で合図をし、中に入っていった。 「うわぁああ!!」 「くそっ・・・!!裏切りだ!!!ヤツを追え!」 呼ばれた時点で急いで中を見ると、大名1名が軽傷を負い仲間の1人が肩から血を流しているのが見えた。 隊長が怪我人の対応をしているのを横目に、は素早く割れた窓枠に足をかけ気配を探り後を追う。 「やっぱり、裏切り者がいたんだ。」 聞こえてくる隊長の声は、里へ医療部隊を派遣する声だ。 すぐに裏切り者の後ろ姿が見える。 気配からして、この先にはカカシさんたちがいるようだ。 「カカシさん、裏切り者はどうやらそちらに向かってるようです。」 インカムでカカシに現状を報告する。 ―りょーかい。 「間もなく合流するようですが、そちらの状況は。」 ―今やっと1人目が捕獲出来そうだ。ただこっちは2人ともやられてる。 「そんな・・・命は。」 ―問題ない。 よかった。命に別状がない事を知り、はほっとしたが徐々に戦闘の後が見える。 「カカシさん、取り敢えず出来る限り足止めします。」 ―サン?!ムチャしなくていいよ? 「いえ、私も上忍です。合流されたら厄介でしょうから。」 インカム越しには、今も必死に戦っているのだろう激しい音が聞こえてくる。 ―・・・無理そうだったら、言いなさいね。 「はい。」 そうカカシに言っては、足にチャクラを練り込みスピードを上げた。 あっという間に敵を追い越し、素早く印を結びクナイを相手目掛けて投げつけた。 は、特殊な能力で空気を歪ませ投げつけたクナイが相手から見えないようにした。 すると案の定クナイが敵の腕に刺さり足を止めた。 「あなた、木の葉の忍にしては結構やるんですね。」 敵は何でもない表情でクナイを腕から抜きとった。 「木の葉の忍をなめないで。」 そう見栄を切ったものの、それ以降は相手を殺せないが防戦一方というとても不利な状況が続いており、 疲労も徐々に蓄積してきている。 チャクラもあと半分しかない。 ヤバイ。 捕獲に罠を仕掛けようにも、隙が無くこちらが派手に攻撃出来ないのを十分に理解し、 分身の術で私の体力を削りにかかっている。 隊長たち護衛組の様子も気になる。 カカシさんは2人目も捕獲出来ただろうか。 討伐組は先ほど護衛組と合流したらしいけど・・・ 周りの状況を気にし出したらきりがない。 あまり時間はかけられない。 誰か1人でいい。 補助についてくれる人が欲しい。 「誰か1名、補助に来てくれませんか。」 の問いに答えたのはカカシだった。 ―討伐組3名はオレと代わってくれ。今しがた2人目の捕獲も完了した。 細工しておくから、音からの応援が来たら引き渡してくれ。 あとはそのまま仲間の2人も引き取って欲しい。ケガは大したことないが動けないんだ。 ―了解。 ―ってことでサン、オレが今からそっち行くから待ってて。 「カカシさん、チャクラは大丈夫ですか?」 ―補助ならなんとかダイジョーブよ。 「わかりました。」 は何人もいる敵の分身を睨み付けた。 「あとはあなた1人。これでおしまいね。」 「さあ、どうでしょう?仲間が何人増えてもあなたたち木の葉の忍など私の相手ではありません。」 敵はそう言って素早く印を結んだ。 術が発動し、音の攻撃がを襲う。 なんとかかわし近くの木に飛び移ったが、どうやらわずかにくらってしまったらしい。 脳が揺れるのを感じ、耳鳴りもする。 ・・・でもおかしい。 先ほどからの攻撃はわざと逃げる余地があるようなものばかりのような気がした。 その時、後ろに知った気配がした。 「どう?調子は。」 「カカシさん。」 は手早く今までに得た敵の状況を話した。 音を使って攻撃する事、よけるだけでは空気の振動が伝わりくらってしまうこと、これからがしようとしていること。 「・・・りょーかい。オレは少し時間を稼げばいいってワケね。」 「はい、お願いします。あと、」 「ん?」 「本体がどれだかわかりますか?」 すでに発動している左目の写輪眼で何人もいる分身の中から見極めてもらう。 「あれだね。」 「ありがとうございます。これであとは準備するだけです。」 はその場で捕獲のための術の準備にはいった。 の術は空間忍術で、わずかだが時空を操作出来る。 今からやろうとしているのは、周りの時空の流れを少しだけ遅くする術で、 自分だけは普通に感じるので周りの人間には自分が目に映らないほどの速さで動いているように感じる。 ただ、残りのチャクラ量からいっても10秒が限界といったところだろう。 「その間に絶対に捕まえる。」 カカシはには近寄らせないように、戦っていた。 そのうちに先ほども感じていた違和感を感じていた。 目的はなんだ?なぜオレを殺しにこない? 「オマエもこんなことしてなんになるってゆーのよ。」 敵である男は薄気味悪い笑顔を浮かべた。 「本当はあのクソどもを1人でも多く殺れればいいと思ったんですがね。」 キィン! カカシが本体目掛けて投げたクナイを敵が弾く。 「あなた達のおかげで台無しです。」 「誰の指示で動いてんの?オレらも疲れるからさー大人しく捕まってくれない?」 ボボボボン! 急に分身の術をといて、カカシの前には本体1人となった。 「せめて木の葉の忍と共に仲間のもとに向かいましょう。」 インカムごしに聞こえてきた、カカシと敵の男の会話にはハッとした。 たくさんの分身 致命的にならないほどの攻撃 どれも逃げるためと思っていた行動もそうじゃない。 時間かせぎだ。 もしかして・・・・!!! 「カカシさん!!!!」 はまだ途中だったが、急いで術を発動させた。 お願い、間に合って。 わずか7秒の間にはカカシのところまで移動し、土で壁を作り今にも爆発しそうに膨らむ男の周りを覆った。 突然爆発音と共にカカシに何かが覆い被さった。 なにが・・・ カカシは今起こった状況を理解しようと瞳を動かした。 視界に入るのは、刀やクナイが刺さり血にまみれたの姿。 「???!!!」 自分に被さったままぐったりしているに突き刺さる刃物を慌てて抜くカカシ。 「カカシさん・・・?」 「どうしてこんなこと」 「あいつ最初から私たちを道ずれにする気だったんですね、慌てて土で覆ったんですけど・・・間に合ってよかったです。」 力なく笑う。 「よくない!よくないでしょうが!?すぐに医療忍者を呼ぶから。」 「いいんです。」 「サン・・・?」 「時間が足りなくて壁がちょっと薄かったみたいですけど、カカシさんが無事なら・・・・それでいいんです。」 「なに言ってんの。」 ごめんなさい、カカシさん。 あれからあなたが忘れられなくて。 少しでもそばに居たくて、隊長に無理を言って今回の応援部隊に組み込んでもらった。 カカシさんが私を見る目が、違う誰かを見ている事なんてどうでもよくなるくらい。 それでも、たとえそれが私じゃなくても。 そばに置いてくれた日々が忘れられなくて 幸せだって、思いこんでいたんです。 そんなの、誰も幸せになんかなれっこないことくらい、気づいても気づかないふりをしてしまうくらいに。 それくらいあの日のあの事が、私のすべてだったんです。 「どうして・・・?なんでオレなんか庇ったりしたんだ。」 震えながら、カカシさんは私をそっと抱きかかえて手を握っていた。 まだなお誰かを呼びに行こうとしたが、無理矢理そばにいてくれるよう頼んだ。 彼は自分に出来る応急措置を必死になってしているようだった。 ジュウ・・・という音がかすかに聞こえる。 だけどそれも無駄だ。 どうせもう私は助からない。 「やっと、触れてくれましたね。」 そっと私はカカシさんの頬に手を伸ばした。 その手は振り払われる事なく、上からカカシの手が重ねられた。 傷だらけの私の手が、カカシさんの医療忍術によって癒されていく。 「・・・泣かないでください、カカシさん。」 「オレは・・・オレはまた、大切な人を守れなかった。」 今にも死にそうなは、そっと笑った。 「今なら少しだけわかる気がします。」 意味がわからない、と言いたげにカカシはを見つめていた。 「弥生さん・・・。カカシさんとの約束の事、紅先輩に聞いたんです。」 「今はそんな事どうでもいい。」 「いいえ。・・・カカシさんにそんな顔をして貰えるなら私も頑張ったってことですよね。 きっと弥生さんには叶わないんでしょうけど。」 「カカシさん」 「弥生さんはきっと、こうなる事がわかっていたんだと思います。」 「、あまりしゃべらない方がいい。」 やっとの事で、言葉を発するはもはや息をするのも辛そうだ。 「ダメです。私・・・弥生さんがどうしてあんな約束したのかやっとわかりました。」 「!」 「紅先輩に聞いたときは、どうしてそんなカカシさんをいつまでも縛りつけるような事をって思いました。」 「!!頼むからもうしゃべるな!!」 「弥生さんが、・・・なぜ自分が死ぬ時にカカシさんの心が欲しいと言ったかわかりますか?」 「うっ・・・!」 ごぼっ、という音と共には口から大量の血を吐いた。 「ハァ、ハァ・・・。弥生さんは・・・カカシさんの心そのものが欲しかったわけじゃないと・・・・・思います。」 「・・・・・。」 カカシは黙って、の最後の言葉を聞いている。 「私も・・・として、あなたに愛されていたなら・・・・。」 「?」 「それが・・・・・欲し・・かっ、た。」 そういい終えると、は静かにカカシを見つめていた瞳を閉じた。 「?なぁ、?!目を開けてくれよ!!!!!!」 カカシは眠るように何も言わなくなってしまったを抱き、その場から離れることが出来なかった。 「うそだ」 「うそだよ、な?。」 はその瞳を閉じたまま、動かない。 ――頼むよ。 ――お願いだ。 「オレを・・・・もう、オレを1人にしないで・・・」 あれから数ヶ月が経った。 相変わらずオレは、淡々と任務をこなし家と慰霊碑を往復する日々を送っている。 慰霊碑の前にたたずんでいると隣にすっと並んだ人がいた。 「サーン。ダメでしょ、まだ病み上がりなんだから。」 「もう、だいたい大丈夫ですよ。ほら。」 は自分の肩に手を置いて腕をくるくると回していた。 「それより・・・手を合わせてもいいですか?・・・弥生さんに」 どーぞ、カカシは弥生の名前が刻まれている所を見つめながら言った。 あれから、カカシが血まみれのを抱いて茫然としている所を派遣されてきた医療部隊が発見した。 ほとんど手遅れで、意識もなく、心臓もすでに止まりかけていたが、 医療部隊の全力の救護と、病院に搬送された後の綱手様の腕のお陰で一命をとりとめた。 任務自体もその後駆けつけた他の仲間たちの手によって、事なきを得た。 テロリスト集団も、音の忍たちは里に引き渡されたため詳しい情報はあまり入っていない。 どうやら、大名に混じっていた抜け忍の1人が実際に仕切っていたようで 自爆してしまった今は音隠れの里からの情報を待つほかない。 意識を取り戻すのに1週間はゆうにかかったが、それからの回復力には目を見張るものがあった。 つい最近、あらかた回復したが退院したいと譲らなかったので、オレの看護つきという条件でオレの家に移った。 「ねぇ、?」 「はい。」 よいしょ、と言って立ち上がろうとしたは少し辛そうだったので手を貸した。 向き合うように立ってから、ようやくカカシは次の言葉を発した。 「オレ、やっとわかったよ。」 何も言わず、はそっと横にある弥生の名前を見て微笑むだけだった。 「弥生が死ぬ時に欲しかったのは、確かにオレの心だ。」 「でも、それは・・・オレの、弥生を愛する心だったんだね。」 慰霊碑の弥生の名前ではなく、オレはを見て言った。 「1人で死んで行くのに寂しくないように。1人残されたオレがまた誰かを愛せるように。」 「はい、だからあの時私にはそう言った弥生の気持ちが何となくわかったんです。」 ただ私には、手に入らないものですけどね。そう言うの横顔は寂しそうだった。 「ねぇ、今日何の日か知ってる?」 「え・・・?」 急に話の方向が変わったので、はカカシの言わんとする事が見えなかった。 「オレの誕生日。」 「今日?!・・・・そういえば、今日15日でしたっけ・・・?」 ずっと入院してきたが、日付に疎くなっているのは当たり前の事だった。 「うん。15日ー」 「すみません、気がつかなくて・・・」 「が気がつかなかったのは、当然でしょーよ。この前までそんな事気にしてる場合じゃなかったんだから。」 ぽん、とカカシはの頭に手を置いた。 「それでさ、オレ欲しいものがあるんだ。」 「何ですか?私に出来る事ならなんだって言ってください!」 「うん、しか持ってないんだけど・・・」 「私しか、持ってないもの?」 「の全てが欲しい」 「え・・・・・?」 「オレ気づいたんだよ。」 カカシはまっすぐとの目を見て言った。 「誰も誰かの変わりにはなれないんだ。」 「それって・・・・」 「オレ、を愛してる。」 「あ、・・・だって私・・・」 「そーだよ。はだ。弥生じゃない。」 カカシの目は今を生きているを見ている。 「カカシさん・・・」 涙で何も言えなくなったを、カカシはそっと抱きしめた。 やっと手に入れたこの気持ちを今度こそ離さないように。 幸せが指の間からすり抜けてしまわぬように。 慰霊碑の前に、影が2つ。 やがて離れていたそれらは慰霊碑に影を落とし、1つになった。 カカシと、重なりあった影を慰霊碑が離れる事を許さないかのように、2人の影を繋いでいた。 以上がカカシ先生誕生日夢です! カカシ先生お誕生日おめでとうございますvv かわらず、力の限り愛してますv なーんてワタクシの今さらな告白なんてどうでもよくてですね、 いや〜〜ダークなお話はやっぱりワタクシには無理でした(汗 戦闘シーンとかも、うんうんうなりながら結局ほとんどかかなくてもいいようにして・・・ なのであんまり話の流れが掴みにくいかもしれません。 すみません、皆さまのすばらしい妄想力におまかせします(涙 じゃあ、そんな話にするなよってかんじなんですが 今回もやはり最後のカカシ先生の誕生日だからさんのすべてが欲しいっていう場面が どうしてもかきたくなってしまったのです。 やっぱり見切り発車ってよくないですねw もっとライトな感じの誕生日夢も考えてはいたのですが、 バレンタインまで取っておこうと思いましたので、 一時お蔵入りでーす。 読んでくださってありがとうございましたー!! |